この地方には珍しく雪が降った。
それも、ふわふわの綿雪だ。
珍しいものをみた。
車のフロントガラスの向こうの世界で
ふわふわと白い妖精のような綿雪がつぎつぎと
地上に舞い降りてくる。
気がつくと、涙を流していた。
ただでさえ雪で視界が悪いのに
これ以上視界がわるくなったら事故っちゃうじゃないか…
手でぬぐうも…
なぜだろう…
次から次へと
涙はあふれ出す。
声まで出して泣きそうになった。
なんでだろう。
綿雪はぼくのそんな動揺なんて関係なく
ふわふわと振り続ける。
たまらず車から降りて
空を見上げた。
不思議と涙は止まっていた。
あまりの幻想的な世界に、
僕は思わず空に心が吸い込まれそうな間隔に
一瞬だけ、
ほんの一瞬だけだけど
落ちそうになって、
はっと、現実に引き戻された。
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